ハワイに財産をお持ちの日本人の方も多いと思います。そのような方は、主にコンドミニアムのような不動産や、最近ではタイムシェアでコンドミニアムやホテルの部屋をお持ちなのではないでしょうか。
ところで、ハワイに財産をお持ちの方が亡くなると、ハワイの財産についても相続の手続きが必要になります。
ハワイの相続手続きは、日本の相続手続きと大きく異なっています。日本の場合は、亡くなった方の財産は全て相続人にダイレクトに引き継がれますが、ハワイでは「probate(プロベート)」と呼ばれる手続きが必要になることがあります。
ここでは、ハワイでの相続手続について説明します。
ハワイでのプロベート手続き
プロベートとは
日本の相続では、遺産の承継手続きに裁判所が関与することはありませんが、アメリカやイギリスのような英米法の国では、遺産を承継する際にプロベートと呼ばれる手続きが必要になります。
プロベートとは、裁判所が関与して、遺産を管理清算し相続人に引き継がせる手続きです。プロベートでは、亡くなった方の遺産は、遺産財団となり、裁判所から任命されたPersonal Representativeが手続きをしていきます。プロベートでは、遺言書の有効性の確認、相続人の確定、債権者への公告や債務の支払い、遺産税などの支払い、相続人への財産の移転といった一連の相続手続が裁判所の管理下で行われます。
ハワイでのプロベートの要否
ハワイでの遺産相続でも、常にプロベートが必要なわけではありません。
財産が少ない場合はプロベートは必要ありませんが、10万ドル以上の財産があるときにプロベートをしなければなりません。
また、不動産を持っている場合は、その価値がいくらであろうと、プロベートが必要になります。タイムシェアの場合も同じです。
ハワイのプロベートの流れ
ハワイのプロベートには、フォーマルプロベートとインフォーマルプロベートがあります。インフォーマルの方が簡略にできます。
アメリカ国内で死亡したときはインフォーマルプロベートが選択されますが、アメリカ国外で死亡したときはフォーマルプロベートの方が良いこともあるようです。また、フォーマルプロベートでは、裁判所が主導して進めるので、弁護士はインフォーマルプロベートと比べると業務量が少なくなるようです。どちらを選ぶかは、そのとき相談しながら決めることになるでしょう。
プロベートを裁判所に申請すると、申請から2か月後位に裁判所のヒアリングがあります。ヒアリング後に開始決定のLetterが出ます。その後裁判所が任命したPersonal Representativeがプロベート手続きを進めていきます。
いつ財産を受け取れるか気になるかもしれませんが、財産を受け取れるのはプロベートの手続きが終了するタイミングです。プロベートは、通常、最低でも1年はかかるので、相続が開始してから1年は財産を受け取れないと思っておく方が良いです。
プロベートで不動産の名義変更ができればそれでいい?
日本の感覚でハワイの不動産の名義変更ができればそれで良いと思われるかもしれません。実際にハワイの弁護士でもプロベートで不動産の名義変更しか関与してくれないこともあるようです。
そのような事務所に依頼すると、税金のことは知りませんから税理士に相談してくださいと言われて、名義変更の手続きのみで終わることもあります。
しかし、先にも説明したように、本来はプロベートの中で税金についても精算がされます。また、被相続人(亡くなった方)がアメリカの非居住者でアメリカ国籍を有しない方の場合、6万ドルを超える資産がある場合には、連邦遺産税がかかるので、税金の申告納付が必要です。ですので、不動産の名義変更ができればそれで終わりとはなりません。
ハワイでプロベートをするときは、現地の専門家の関与が必要ですが、その専門家がどこまでやってくれるのかは依頼する前によく確認する必要があります。
プロベートを避ける方法
プロベートには長い時間がかかります。
不動産がある場合はプロベートが必要と先程説明しましたが、実は不動産があってもプロベートを避ける方法があります。
一つは、Joint Tenancyになっている場合。もう一つは、Transfer of Deathの場合です。
Joint Tenancyは、例えば夫婦で不動産を夫婦の名義で購入して、どちらかが亡くなると自動的に生存配偶者の方に権利が移転するものです。
Transfer of Deathは、死亡したときに、権利を引き継ぐ人をあらかじめ決めておく制度です。この場合は、登記所にDeedという書類を登記しておきます。ただし、タイムシェアにはこれは使えません。
この他に信託(trust)する方法もありますが、ハワイで外国人の信託はかなり難しいとされています。
ハワイの相続手続はご相談を
ハワイには日系の弁護士や税理士がいますので、ご自身で探していただきご依頼されることもできます。しかしハワイでの手続きはご自身だけで進めることが難しい場合があります。
その理由は
- プロベートという日本人になじみがない裁判手続きを経ることが多いので手続きの進行がわからない
- 日本語のやり取りだとしても先方は英語が母国語であって日本語は第二言語となります。日本人と同じようなやり取りをしていると誤解が生じることもあります。また受任契約書は英語ですしプロベートの資料もすべて英語となります
- プロベート準備から完了まで税理士や不動産業者など複数の専門家が関わっていきます。1年以上の長期にわたりこれら専門家と連絡を取り合い調整をしていくのは個人では大変だと感じられることが多い
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズのサポート内容
初期サポート
案件についてのご相談、必要となる専門家のご案内とご紹介、必要書類のご案内と現地への送付、現地専門家の見積もり取得
フルサポート
上記初期サポートに加えて、現地専門家との契約からプロベートの進行、完了まで当事務所が関与します。現地専門家との連絡と調整だけでなく、やり取りされる書類についてご依頼者様にご案内し必要に応じて内容を翻訳しご説明します。(翻訳専門家に翻訳を依頼すべき書類については別途翻訳費用が掛かります)
初期サポートのみまたはフルサポートのいずれでも関与できます。
もしご自身でプロベートを進めてきたけれど途中からのサポートが必要な場合にもご相談ください。途中からのサポートの場合は最初からのやり取りを精査する必要がありますので、フルサポート費用よりも割高となる場合があります。