国際相続

海外在住の相続人が相続放棄する際の流れや必要書類、注意点を解説

5月 27, 2022

海外在住海外赴任や国際結婚などの理由で海外に在住している間に、日本に住むご家族が亡くなられたとき、相続放棄を検討するケースも少なくありません。当事務所に海外からの相続放棄の相談では、次のような理由によるもが多いです。

  • 相続は日本に居住している相続人がすれば良いと考えていて自分は相続するつもりがない
  • 被相続人に借金があり相続したくない

相続放棄には手続きの期限が定められているため、速やかに書類や証明書を用意して手続きを進める必要があります。

特に海外に住んでいる方の場合は、書類のやり取りに時間を要することから、相続放棄のスケジュールがタイトになってしまうことも珍しくありません。トラブルを防ぐためにも、手続きの流れや必要書類などについて知っておくことが重要です。

今回の記事では、海外に住む方が日本のご家族さまの相続人となった場合で、相続を放棄するときの手続きについて解説します。

海外在住でも相続放棄のルールは日本と基本同じ

海外在住の方であっても、基本的な相続放棄のルールは日本と変わりません。日本に住んでいるご家族の相続を放棄する場合には、期限内に海外から日本の家庭裁判所に書類を提出する必要があります。

ただし、海外在住の場合でも日本国籍であれば日本の戸籍を裁判所に提出する必要があります。戸籍を取り寄せるにも時間がかかりますし、書類の提出方法は「郵送」となるため、期間の余裕を持って提出することが重要です。

相続放棄の手続きにかかる費用

相続放棄の手続きにかかる費用は、主に以下が挙げられます。

相続放棄申述書貼付用収入印紙800円
被相続人の住民票除票か戸籍附票300円
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本750円
相続放棄する人の戸籍謄本450円
連絡用の郵便切手400円~500円
在留証明書1,200円相当

被相続人との関係によって戸籍関係の必要範囲が異なります。

相続放棄の手続きを進めるなかで、家庭裁判所から申述者に対して郵便物が届きます。例えば、照会書や相続放棄申述受理通知書です。このうち、照会書は期限内に回答を返送する必要あります。国際郵便はEMSを使っても配達までの期間が読めないので、国内に送達場所や送達受取人を置いて、そこで郵便を受け取るようにする必要があります。

裁判所によっては照会書を送ることなく相続放棄を受理するところもあります。送達場所や送達受取人が必要になるかどうかはケースバイケースです。

原則相続放棄の期日は被相続人の死亡を知った日から3か月

相続放棄の期限は、相続人が被相続人の死亡を知り、自分に相続が発生することを認識した日から3か月と定められています。

なお、相続後3か月を過ぎてから被相続人の借金が判明することもあります。その場合は、借金を認識してから3か月以内であれば、相続放棄が認められる可能性があります。

【手順別】海外在住者の相続放棄における注意点

海外在住の方が相続放棄の手続きをする流れについて解説します。

必要書類を集める|在留証明書が必要になる(相続放棄する人が日本国籍の場合)

相続放棄の手続きにはさまざまな書類が必要です。

必要書類と対象者は、以下のとおりです。

必要書類対象者
住民票除票、あるいは戸籍附票被相続人のもの
相続放棄申述書申述者が記入
関係者の戸籍謄本相続関係者のもの
在留証明書)海外在住者のみ


下記で、必要書類についてそれぞれ解説します。

住民票除票、あるいは戸籍附票

住民票除票は、被相続人が亡くなる前に住民登録のあった市区町村の役所で取得できます。

戸籍附票については、亡くなる前に本籍地であった市区町村の役所で発行できます。

同じ被相続人について他の人が相続放棄、もしくは相続放棄期間の延長手続きを行っている場合は、提出済みの書類で代用することも可能です。

相続放棄申述書

相続放棄申述書は、相続放棄を裁判所に申し立てるための書類です。相続放棄申述書には、申述人の住所や氏名、相続を知った日、相続放棄の理由と相続財産の概略を記入します。裁判所のWebサイトで公開されている記入例も参考にできます。

参考:裁判所「相続の放棄の申述

ただし、素人判断で相続放棄をして大失敗をすることもあるので、簡単そうに見える書類ですが専門家に相談する方が良いでしょう。

関係者の戸籍謄本

戸籍謄本を入手できる場所は、本籍地がある市区町村の役場です。海外に住んでいる場合は郵便で請求できます。その際、手数料として定額小為替証書を同封する必要があります。

また、被相続人との続柄によって戸籍に関する必要な書類が異なります。遺言状などで相続人が指定されていない場合には、民法で定められた法定相続人が相続人として見なされます。法定相続人の範囲については、民法で以下の優先順位が定められています。

■相続人の優先順位

相続順位対象者対象者が死亡しているとき
常に相続人配偶者
第一順位相続人孫・ひ孫
第二順位相続人父母祖父母
第三順位相続人兄弟姉妹甥・姪

被相続人との続柄によって必要書類が異なります。ご自身がどの相続人にあたるのかを確認して、必要な戸籍関係の書類を用意してください。

■戸籍に関する必要書類

申述人の戸籍謄本
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
被相続人の出生から死亡までに関わる全ての戸籍謄本
被相続人の死亡した子や孫、ひ孫の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
被相続人の父母、祖父母の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
被相続人の兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

■相続人が用意する書類

配偶者・子①②
孫・ひ孫①②④(④は本来の相続人である、自分の親のもの)
父母①③④(④は第一順位相続人の子や孫のもの)
祖父母①③④⑤(⑤は第二順位相続人でもより相続人に近い父母のもの)
兄弟姉妹①③④⑤(⑤は第二順位相続人すべてのもの)
甥・姪①③④⑤⑥(⑥は本来の相続人である、自分の親のもの)

相続順位が上位の人が相続を放棄すると、次の順位の人が相続人になります。被相続人が債務超過になっている場合、相続を放棄するケースが多く見られます。

在留証明書(海外在住者限定)

在留証明書は、海外のどこに住んでいるのか、海外の住所を証明するための書類です。基本的には、在外公館に本人が出向いて在留証明書の発行を依頼する必要があります。

厳密に言うと、在留証明書は必ずしも必要ないと思います。というのも、日本にお住まいの方が相続放棄をする際、住民票は相続放棄の添付書面とはされていないので、それと同じで住所を証明する在留証明書も必ずしも家庭裁判所に提出する必要はないでしょう。

ですが、相続放棄申述書には、不正確な住所を記載するわけにはいかないため、在留証明書に記載された住所を記入します。また、在留証明書には、日本の本籍地も記載されるので、相続人本人の住所であることの証明にもなるでしょう。

そのため、当事務所では、在留証明書の取得をお願いしています。

参考:外務省「在外公館における証明

サイン証明(海外在住者限定)

海外在住の方の相続放棄について書かれたサイトには、署名証明書が必要と説明されているものもありますが、署名証明書が必要だとは思われません。というのも、日本にお住まいの方が相続放棄をする際に、家庭裁判所で印鑑証明書の提出を求められることは通常ないので、それと同じで署名証明書を添付する理由はないでしょう。

ただ、何度も領事館に行けない方は、万一に備えて署名証明書も取得しておくのが無難かもしれません。

相続放棄をする人が外国籍になっているとき

当事務所に相談が寄せられる中には、相続人の方が外国籍を取得して日本国籍を喪失しているケースもあります。

日本国籍を喪失している場合は、日本の戸籍は除籍されていますし、日本領事館で在留証明書の交付を受けることはできません。

そのようなときでも、被相続人との関係がわかる書類を提出する必要があります。当事務所の例でも、日本国籍を喪失した記載のある除籍謄本と宣誓供述書を裁判所に提出して相続放棄をしたこともあります。

どのような書類が必要になるかは事情によりますので、詳しくはお問い合わせください。

家庭裁判所とやり取りを行う|送受信に時間がかかる

相続放棄申述書をはじめ、相続放棄に必要な書類や証明書を用意したあとは、被相続人が最後に住民登録のあった地域を管轄する家庭裁判所に提出します。海外から日本への郵送には時間がかかるため、必要書類に抜け・漏れがないか確認しておくことが欠かせません。

並行して、戸籍関係の書類を入手するために、該当の役所にも問い合わせをします。書類の送付方法や返信用封筒に代わる手段、費用の支払い方法をよくご確認ください。在留証明書を入手する必要があるため、在外公館とも日程調整が必要です。

送付方法を検討する

家庭裁判所や役所から指定がなければ、ご自身で郵送方法を選択します。国や地域によって利用できる運送業者は変わるため、ご自身の住む地域で郵送方法を選ぶ必要があります。

また、国際郵便は何らかのトラブルによって遅延するケースも多く、希望通りの日時に届かない可能性もあります。特に、コロナ禍の影響で運航便が減り、輸送力の確保が難しい状況下では、大幅な遅延も考えられます。

『EMS(国際スピード郵便)』は書類の発送によく用いられる手段ですが、配送日数が比較的長いという問題があります。そのため、急ぎの場合は『UPS』や『FedEx』などのクーリエ便を利用するほうが確実です。

■UPS・FedEx・UPSの配送日数の目安

UPSFedExEMS
最速便1~3日1~3日3~9日
通常便3~5日2日~5日

家庭裁判所に書類を送付する

相続放棄申述書を記入して書類を揃えたあとは、家庭裁判所に送付します。期限が迫っている場合は、お住まいの地域からもっとも早く郵送できる手段を選ぶ必要があります。また、送付後は運送業者の追跡機能を用いて、確実に期限までに届けられたかを確認します。

照会書(質問書)に回答する(約1~2週間)

家庭裁判所に申述書が届いてから約1〜2週間後(+郵送日数)に、家庭裁判所から照会書(質問書)が送付されます。

照会書とは、相続放棄が本人の意思で申述されたことを確認するための書類です。相続財産をすでに処分していると相続放棄できないため、その点についても確認が行われます。記載されている内容に沿って回答書を記入して、家庭裁判所に返送します。

相続放棄申述受理通知書(約2~3週間)

回答書の内容が家庭裁判所で確認され、相続放棄が認められると、申述者に対して相続放棄申述受理通知書が送付されます。

申述者が回答書を送付してから約2〜3週間(+郵送日数)後に送付されることが一般的です。相続放棄申述受理通知書が届けば、相続放棄の手続きは完了となります。

【当事務所事例】海外在住者が相続放棄を依頼する方法

前述のとおり、相続放棄の手続きは必要書類のやり取りが多く、時間がかかります。特に、書類の郵送日数がかかる海外在住の方は、早めに手続きを始めなければ期限内に処理が完了しないケースも考えられます。

司法書士事務所神戸リーガルパートナーズでは、海外在住の方で相続放棄をお考えの方のご相談を承っております。相談方法や費用については、下記をご確認ください。

海外にいてもオンラインで相談可能

海外からの相続放棄の手続きは、オンラインで専門家に任せることをおすすめします。

司法書士事務所神戸リーガルパートナーズでは、さまざまなオンラインシステムに対応し、海外に住む方からの相談を受け付けています。

相談時に使用可能なシステム

    • Zoom
    • Google Meet
    • Skype

    相続放棄の手続きについて、ご自身で役所や家庭裁判所とやり取りするには大きな労力がかかります。海外からでも依頼ができる当事務所にご相談いただくことで、時間と労力を削減して、依頼者さまの負担を最小限に抑えることが可能です。国際的な案件に強い当事務所では、海外からの依頼を多く受け付けています。

    相続放棄を依頼する費用

    相続放棄の依頼費用について、3つのプランをご用意しております。

    依頼する時期やサポートの違いなど、ご自身に合ったプランをお選びいただけます。

    参考:司法書士事務所神戸リーガルパートナーズ「相続放棄

    各プランのサポート内容については「相続放棄」で詳しくご紹介しているため、あわせてご確認ください。海外在住の方であれば、手続きのほとんどを依頼していただくミドルプランがおすすめです。

    海外在住者の相続放棄はお早めにご相談ください

    海外在住の方がスムーズに相続放棄を申し立てるには、早めに手続きを進めることが必要です。

    司法書士や弁護士に手続きを依頼する場合においても、サインした文書を日本に送ることが必要なため、海外から日本までの送付期間を考慮しておくことが欠かせません。

    また、戸籍関係の書類を入手する際にも数日はかかります。トラブルなく、手続きを円滑に進めるために、司法書士事務所神戸リーガルパートナーズにお早めにご相談ください。

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