国際相続

台湾にある財産の相続手続き完全ガイド

台湾に不動産や銀行預金が残されている──。親の相続手続きを進める中で、初めてそのことを知り、どこから手をつければよいか途方に暮れている方も少なくありません。

台湾の財産を相続する場合、手続きは日本ではなく台湾で行う必要があります。不動産と銀行預金では窓口も手順も異なり、相続税の申告期限は死亡から6か月以内という日本よりかなり短い期間に台湾のルールにも注意が必要です。

このページでは、台湾にある財産の相続手続きについて、準拠法の考え方から必要書類・全体の流れ・期間の目安まで、当事務所の実際の対応事例をもとにわかりやすく解説します。日本から手続きを進める方法についてもご案内しますので、ぜひ参考にしてください。

台湾の財産相続で最初に知っておくべきこと

準拠法は被相続人の本国法 ── 日本人なら日本の民法が適用

台湾に財産があるからといって、相続そのものに台湾の法律が適用されるわけではありません。日本の法律(法の適用に関する通則法 第36条)では、相続は被相続人の本国法によると定めています。つまり、被相続人(亡くなった方)が日本人であれば、遺産分割や相続人の範囲などには日本の民法が適用されます。

実はこの考え方は台湾側も同様です。台湾の「渉外民事法律適用法」においても、相続は被相続人の死亡当時の本国法によると定められています。日本と台湾の双方で準拠法の考え方が一致しているため、被相続人が日本人であれば、日台どちらの観点からも日本法が相続に適用されます。

ただし手続きは台湾のルールに従う必要がある

準拠法が日本法だとしても、台湾にある財産を動かすための手続きは台湾のルールに従う必要があります。不動産の名義変更は台湾の地政事務所(日本の法務局に相当する機関)で、銀行預金の解約は台湾の各金融機関の手続きに従います。

台湾籍の方が被相続人の場合は、台湾の法律(中華民国民法)が相続の実体にも適用されます。被相続人の国籍によって前提が変わりますので、不明な場合はまずご相談ください。

台湾にある主な財産と手続き窓口

台湾に残された財産は、大きく「不動産」と「銀行預金」の2種類に分かれます。それぞれ手続きを行う窓口と必要書類が異なります。

不動産(土地・建物)→ 地政事務所で相続登記

台湾の不動産を相続する場合、日本の法務局に相当する地政事務所(地政機関)で相続登記(所有権移転)の手続きを行います。実際の申請は、台湾の不動産登記の専門家である地政士に依頼するのが一般的です。

相続登記の期限は死亡から6か月以内と定められています。相続登記が完了して初めて、売却や処分も可能になります。早めに着手することをおすすめします。

銀行預金 → 各金融機関で解約・払戻し

台湾の銀行口座に預金が残っている場合は、各金融機関ごとに相続手続き(口座解約・払戻し)を行います。金融機関によって求められる書類が異なり、ある銀行で受け付けてもらえた書類でも別の銀行で追加書類を求められることも珍しくありません。口座のある銀行ごとに確認・対応が必要です。

払い戻された資金を日本へ送金する場合、金額が大きいときは台湾の中央銀行による許可が必要になることがあります。送金の手続きについても事前に確認しておくことをおすすめします。

被相続人の死亡が金融機関に知られると口座が凍結され、相続手続き完了まで引き出しができなくなります。台湾の銀行口座の有無は早めに確認しておくことが重要です。

台湾の相続税申告 ── 期限と注意点

台湾の財産を相続する際に見落としがちなのが、相続税の申告手続きです。台湾では相続税の申告期限が定められており、申告が完了していないと、その後の不動産相続登記や銀行預金の解約手続きを進めることができません。財産の手続きと並行して、早めに対応する必要があります。

申告期限は死亡から6か月以内

台湾の相続税申告期限は、被相続人が死亡した日から6か月以内です。日本の相続税申告(10か月以内)より期限が短い点に注意が必要です。

申告期限は3か月延長できる

6か月以内の対応が難しい場合、現地の弁護士などの代理人を通じて申告期限を3か月延長することができます(最長9か月)。日本側の書類準備や認証手続きに時間がかかるケースでは、この延長制度を活用することが有効です。

申告期限の延長手続きも、現地の専門家(弁護士等)への依頼が必要です。日本での手続き状況を見ながら、早めに現地専門家と連携することをおすすめします。

台湾の相続手続きの全体の流れ

台湾にある財産の相続手続きは、大きく5つのステップで進みます。日本側の書類準備から始まり、相続税申告を経て、不動産・預金それぞれの手続きへと続きます。

台湾財産の相続手続き ── 全体の流れ
1
 
相続人の確定・書類準備(日本側)
戸籍謄本・身分証明書・授権書(委任状)等を収集し、台湾での使用に向けて公証・認証を取得
2
 
台湾側の書類収集
台湾戸籍(戸政事務所)・不動産謄本・銀行情報等を取得
3
 
相続税の申告(期限:死亡から6か月以内)
現地弁護士を通じて申告。間に合わない場合は3か月の延長申請を検討
4
 
不動産の相続登記(地政事務所)
地政士に依頼して所有権移転登記。売却希望の場合はこの後に手続き
5
銀行預金の解約・払戻し・日本への送金
金融機関ごとに手続き。大口送金は台湾中央銀行の許可が必要な場合あり

STEP1:相続人の確定と書類準備(日本側)

まず日本側で、被相続人と相続人の関係を証明する書類を収集します。戸籍謄本などが必要になりますが、台湾の手続きで使用するためには公証・認証が必要です。この他に身分証明書(パスポートや運転免許証)、台湾の弁護士や地政士への授権書(委任状)も公証や認証が必要になります。この認証手続きに一定の期間がかかるため、早めに着手することが重要です。

STEP2:台湾側の書類収集

台湾側では、被相続人の台湾戸籍(中華民国戸籍)などの書類を取得します。台湾籍の方が被相続人の場合は戸政事務所で取得できます。戸籍のつながりが複数にわたっている場合は、書類の収集に時間がかかることがあります。

STEP3:相続税の申告

必要書類が揃ったら、現地の弁護士などを通じて相続税の申告を行います。死亡から6か月以内が申告期限です。書類準備が間に合わない場合は3か月の延長申請を検討してください。申告が完了すると、不動産登記・銀行手続きへと進むことができます。

STEP4:不動産の相続登記(地政事務所)

相続税申告の完了後、地政士に依頼して地政事務所での相続登記手続きを行います。登記が完了すると、相続人名義への所有権移転が確定します。売却を希望する場合はこの後に進めることができます。

STEP5:銀行預金の解約・払戻し

口座のある各金融機関に対して、相続手続き(口座解約・払戻し)を申請します。金融機関ごとに必要書類が異なる点に注意が必要です。払い戻しを受けた資金を日本へ送金する場合は、金額によって台湾中央銀行の許可手続きが加わることがあります。

不動産と預金の手続きは同時並行で進められる?

相続税の申告が完了すれば、不動産の相続登記と銀行預金の解約手続きは基本的に同時並行で進めることができます。どちらを先に終わらせなければならないという順序はなく、それぞれ現地の専門家(地政士・金融機関)と並行して動くことが可能です。

不動産の相続登記も6か月以内という期限があるため、相続税の申告手続きと合わせて、できるだけ早い段階から地政士への依頼準備を進めておくことをおすすめします。

日本から手続きを進める場合、現地の地政士・弁護士・金融機関それぞれと並行してやり取りを進めることで、全体のスケジュールを短縮できます。窓口を一本化してコーディネートできる専門家に依頼すると、負担を大幅に軽減できます。

必要な書類は?

台湾での相続手続きに必要な書類は、日本側で準備するものと台湾側で取得するものに分かれます。案件の内容によって追加書類が求められる場合がありますが、主な書類は以下のとおりです。

日本側で準備する書類

日本の書類を台湾の手続きで使用するには、所定の認証手続きを経る必要があります。この認証には一定の期間がかかるため、できるだけ早めに着手することが重要です。

日本側で準備する主な書類
書類 備考
被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡) 認証手続きが必要
相続人全員の戸籍謄本 認証手続きが必要
授権書(委任状) 台湾の弁護士・地政士等への委任状。認証手続きが必要
身分証明書の写し パスポート・運転免許証等。認証を求められることもある
遺産分割協議書 相続人間で協議が必要な場合

台湾側で取得する書類

台湾側の書類は、現地の専門家(地政士・弁護士)を通じて取得・手配するのが一般的です。

台湾側で取得する主な書類
書類 備考
被相続人の台湾戸籍(出生〜死亡) 戸政事務所で取得
不動産謄本・権利証明書 不動産がある場合
銀行の残高証明・口座情報 預金がある場合
上記はあくまで主な書類の目安です。被相続人の国籍・財産の種類・相続人の構成によって必要書類は異なります。詳細はお問い合わせください。

日本から手続きを進められる?現地に何回行く必要がある?

結論として、台湾の相続手続きは、現地の専門家(弁護士・地政士)に授権書(委任状)を渡すことで、日本にいながら進めることが可能です。相続税の申告・不動産登記・銀行手続き・不動産売却のいずれも、現地代理人が手続きを代行できます。当事務所がこれまで対応した案件では、依頼者が台湾に渡航することなく手続きを完了しています。

日本側で行うことは、主に書類の収集と認証手続きです。戸籍謄本・印鑑証明書・委任状などを準備し、台湾で使用できる形に整えたうえで現地専門家に送付します。

当事務所では、台湾の弁護士・地政士と連携し、日本側の書類準備から現地手続きのコーディネートまで一括してサポートしています。中国語が読めない方・現地に渡航できない方もお気軽にご相談ください。

手続きにかかる期間の目安

台湾の相続手続き全体にかかる期間は、財産の種類や相続人の構成、書類の収集状況によって大きく異なります。ここでは期間を見積もるうえで押さえておくべきポイントをご説明します。

まず注意が必要なのは、日本側の書類(戸籍謄本・委任状等)は認証手続きを経る必要があり、この準備に一定の期間がかかる点です。認証手続きは順を追って進めるため、書類が揃ってからすぐに台湾での手続きに入れるわけではありません。被相続人が亡くなったらできるだけ早めに動き出すことが重要です。

また、相続税の申告期限(死亡から6か月)と不動産相続登記の期限(同6か月)がある点も、スケジュール管理のうえで重要です。書類の準備が間に合わない場合は、相続税申告については3か月の延長申請を早めに検討してください。

銀行預金の払戻し手続きは、相続税申告の完了後に各金融機関と個別に進めます。複数の口座がある場合や金融機関ごとに追加書類を求められる場合は、その分だけ時間がかかることがあります。

解決事例

当事務所の対応事例
不動産相続・売却

台湾の不動産を相続・売却し、売却代金を日本へ送金

台湾に不動産を持つ被相続人が亡くなり、日本在住の相続人から依頼を受けました。現地の地政士・不動産業者と連携し、相続登記と売却手続きを進め、売却代金を日本へ送金するところまでサポートしました。依頼者が台湾に渡航することなく手続きを完了しています。

預金相続・申告期限延長

相続税申告期限を延長し、台湾の銀行預金の相続手続きを完了

台湾に銀行預金が残されていたケースで、日本側の書類準備に時間を要したため、現地弁護士を通じて相続税の申告期限を延長しました。期限延長後に申告を完了させ、その後の銀行手続きもスムーズに進めることができました。

当事務所のサポート内容

司法書士事務所神戸リーガルパートナーズでは、台湾をはじめとする国際相続案件に対応しています。台湾の弁護士・地政士と連携し、日本側の書類準備から現地手続きのコーディネートまで、一括してサポートします。

  • 日本側の書類収集・認証手続きのサポート
  • 授権書(委任状)の作成・認証手続き
  • 台湾の弁護士・地政士との連携・コーディネート
  • 不動産相続登記・売却手続きのサポート
  • 銀行預金の解約・日本への送金手続きのサポート

中国語が読めない方、現地に渡航できない方でも対応可能です。英語でのご相談も承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。

台湾の財産相続についてご相談ください

台湾にある不動産・銀行預金の相続手続きは、早めのご相談が重要です。日本側の書類準備から現地専門家との連携まで、当事務所が一括してサポートします。

オンライン相談(Zoom等)も対応しています

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