不動産取引

住所変更登記の義務化|外国人が知るべき2026年4月の変更点

2026年4月1日、住所・氏名変更登記の申請が義務となりました。変更から2年以内に登記を申請しなければ、5万円以下の過料が科される可能性があります。

国内在住の外国人については、住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)の情報を活用して登記官が職権で変更登記を行うスマート変更登記の仕組みを利用することで、引越しのたびに申請する手間を省くことができます。一方、海外に帰国した・あるいは海外在住のまま日本の不動産を所有している外国人は状況が異なります。住民票が存在しない以上、行政が住所変更の事実を把握する手段がなく、義務を果たすためには名義人が自ら能動的に手続きを行うしかありません。

本記事では、不動産業者・士業・金融機関担当者の方を対象に、外国人オーナーの居住状況別の対応方針と実務上の注意点を整理します。特に見落とされがちな海外在住オーナーへの対応を中心に、必要書類・手続きフロー・「正当な理由」による猶予の活用まで、顧客対応に直接役立つ情報をお届けします。

住所変更登記の義務化とは?2026年4月施行の概要

義務化の対象・申請期限・過料(5万円以下)のリスク

2026年4月1日、改正不動産登記法が施行され、所有権登記名義人は住所または氏名が変わった場合、変更を知った日から2年以内に変更登記を申請することが義務となりました(不動産登記法第76条の5)。義務に違反した場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります(同法第164条の2)。国籍に関わらず、日本に不動産を所有するすべての名義人が対象です。

住所変更登記 義務化の概要(2026年4月1日施行)
項目 内容
施行日 2026年4月1日
義務者 所有権登記名義人(国籍不問・外国人も対象)
申請期限 住所・氏名の変更を知った日から2年以内
違反した場合 5万円以下の過料
法的根拠 不動産登記法第76条の5・第164条の2
登録免許税 不動産1件につき1,000円
スマート登記との関係 日本に住民登録がある外国人は職権登記の申出可。海外在住者は対象外

実務上、住所変更登記は「次の売却・融資・相続登記のタイミングで合わせて行う」という慣行が広く定着しています。変更後2年以内に次の登記機会がある場合、この方法は引き続き合理的な選択です。ただし、2年以内に登記機会が見込まれない場合は、義務違反のリスクが生じます。外国人オーナーへのご案内では、次の登記の予定を確認したうえで、必要に応じて変更登記を単独で申請するよう促すことが重要です。

国内在住と海外在住で対応が分かれる

国内在住の外国人:スマート変更登記の申出で対応可能

スマート変更登記とは、不動産の所有者が自ら変更登記の申請を行わなくても、住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)の情報をもとに登記官が職権で氏名・住所の変更登記を行う仕組みです。正式には検索用情報の申出(スマート変更登記の申出)といいます。在留カードを持ち、日本国内で住民登録をしている外国人オーナーであれば利用できます。

なお、申出が必要なのは令和7年4月21日以前に所有権を取得した場合に限られます。同日以降に所有権の登記をした場合は、登記申請時に検索用情報の届出が行われているため、改めての申出は不要です。

売買・抵当権設定など次の登記機会があれば、そのタイミングで住所変更登記を併せて行うという従来の実務慣行も、変更後2年以内であれば引き続き有効です。スマート変更登記の申出と組み合わせることで、国内在住の外国人オーナーへの対応負荷は大幅に軽減できます。

⚠️

国内在住の外国人オーナーへの対応ポイント:令和7年4月21日以前取得の場合、検索用情報の申出(法務局)を済ませているか確認する。未申出であれば、売買・融資等の次の登記機会に住所変更登記を同時申請するよう案内する。

海外在住・帰国済みの外国人:自ら能動的に登記するしかない

帰国後に日本の住民票が抹消された外国人、あるいは日本に住民登録をせずに不動産を所有している外国人は、スマート変更登記の対象外です。行政が住所変更の事実を知る手段がないため、名義人が自ら能動的に変更登記を申請しなければなりません。次の売買や抵当権設定が何年も先になる場合でも、変更から2年以内に申請する義務があります。

この層へのアプローチが最も重要です。帰国を予定しているオーナーに対しては、出国前に変更登記を済ませるか、司法書士への委任状を作成しておくよう早めに案内することが、過料リスクを防ぐうえで最も効果的な対応です。

日本国内連絡先の登記とは何か?

外国に居住する不動産所有者(外国人・日本人を問わず)は、日本国内における連絡先(住所・氏名・メールアドレス)を登記することができます(不動産登記法第76条の3)。義務ではありませんが、登記しておくことで行政機関や裁判所からの通知が確実に届くようになり、公示送達のリスクを軽減できます。海外在住の外国人オーナーへの対応として、変更登記と合わせて案内することをお勧めします。

検索用情報の申出(スマート変更登記)の手続き方法

申出の手順

検索用情報の申出は、不動産の所在地を管轄する法務局に申出書を提出して行います。申出は所有権移転登記などと同時に行うことも、単独で行うことも可能です。申出後は、住基ネットの情報をもとに登記官が職権で変更登記を行うため、オーナー側の手続き負担はほぼゼロになります。

スマート変更登記が使えないケース

以下に該当する外国人オーナーはスマート変更登記の対象外です。この場合は、変更ごとに自ら(または司法書士を通じて)申請する必要があります。

  • 日本国内に住民票がない(海外居住・帰国済み)
  • 検索用情報の申出を行っていない(令和7年4月21日以前取得の場合)
  • 在留資格の変更により外国人住民としての登録情報が更新されていない
⚠️

帰国後は住民票が抹消されるため、それまで申出済みであってもスマート変更登記は機能しなくなります。帰国を予定しているオーナーへは、出国前の変更登記完了または司法書士への委任状作成を早めに案内してください。

メールアドレス提供の義務化(2025年4月21日施行)との関係

2025年4月21日の改正施行により、不動産登記の申請時に申請人のメールアドレスを提供することが求められるようになりました(不動産登記令第7条)。登記が完了した際、登記官から登記完了の通知がメールで届きます。

住所変更登記を申請する際も同様に対応が必要です。外国人オーナーが司法書士へ委任する場合、委任状の作成時点でメールアドレスを確認・記録しておくと手続きがスムーズです。帰国後に日本のメールアドレスが使えなくなるケースもあるため、現在有効なアドレスを確認することも重要なポイントです。

【実務編】住所変更登記の手続きフローと必要書類

申請に必要な書類一覧(外国人の場合)

住所変更登記の手続きフロー|居住状況別

▼ 国内在住の外国人

1
 
司法書士へ相談・依頼
現在の住所・変更日・不動産の情報を伝える
2
 
書類の準備
住民票(現住所記載のもの)を用意
3
 
登記申請(法務局)
司法書士が申請。申請時にメールアドレスの提供が必要
完了
登記完了通知をメールで受領
所要期間:1〜2週間程度

▼ 海外在住・帰国済みの外国人

1
 
司法書士へオンラインで相談・依頼
メール・ビデオ通話で対応可能
2
 
委任状の作成・署名
必要に応じて在外公館での認証が必要な場合あり
3
 
住所証明書類の取得
在外公館発行の証明書 or 外国公証人の宣誓供述書+日本語訳
4
 
書類を司法書士へ送付
国際郵便またはスキャンデータで対応
5
 
司法書士が法務局へ登記申請
申請時にメールアドレスの提供が必要
完了
登記完了通知をメールで受領
所要期間:書類取得を含め1〜2ヶ月程度

必要書類はオーナーの居住状況によって異なります。以下を参考に、個別に確認してください。

国内在住の外国人の場合

  • 登記申請書
  • 住民票(現住所記載のもの)
  • 登録免許税(不動産1件につき1,000円分の収入印紙)

海外在住・帰国済みの外国人の場合(追加書類)

  • 在外公館が発行する証明書、または外国公証人が作成した宣誓供述書(住所証明)
  • 日本語訳(翻訳者の氏名・押印)
  • 委任状

海外在住の外国人オーナーが司法書士に委任する場合の流れ

  1. 司法書士へオンラインで相談・依頼
  2. 委任状の作成・署名(必要に応じて在外公館での認証)
  3. 住所証明書類の取得(在外公館または外国公証人)
  4. 書類を司法書士へ送付(国際郵便またはスキャンデータ)
  5. 司法書士が法務局へ登記申請
  6. 登記完了通知をメールで受領

期限に間に合わない場合「正当な理由」で猶予できるか?

正当な理由がある場合は、過料が科されない可能性があります。外国書類の取得に通常より長い期間を要する場合や、天災・不可抗力による遅延などが該当し得ます。ただし、認定の運用は法務局によって異なる部分もあり、現時点では具体的な基準が完全に明確化されていません。期限が迫っている場合は、早めに司法書士へ相談することを強くお勧めします。

⚠️

「正当な理由」の範囲は、法務省の通達・実務運用によって今後明確化される見込みです。最新情報は法務省の公表資料をご確認ください(2026年3月現在)。

費用・期間の目安

住所変更登記の費用・期間の目安
項目 国内在住の外国人 海外在住・帰国済みの外国人
登録免許税 1件 1,000円 1件 1,000円
司法書士報酬 10,000〜20,000円程度 30,000〜60,000円程度
書類取得費用 数百〜数千円 数千〜数万円
(国・手続きによる)
手続き期間 1〜2週間程度 1〜2ヶ月程度
⚠️

費用はケースにより異なります。詳細はお問い合わせください(2026年3月現在)。

 

住所変更登記のご相談はオンラインでも対応します

住所変更登記・外国人不動産登記のご相談

住所変更登記の義務化に関するご不明点や、外国人オーナーへの対応でお困りの場合はお気軽にお問い合わせください。海外在住の方・遠方の方にもオンラインで対応しています。

オンライン相談対応可・海外在住の方もご依頼いただけます

-不動産取引

司法書士国際法務.comの司法書士事務所神戸リーガルパートナーズ TEL: 078-262-1691
メールでお問い合わせ