商業登記

海外在住の日本人役員のサイン証明|大使館で取る書類と準備

海外に住む日本人を代表取締役や取締役に迎えるとき、本人が日本の印鑑証明書を取れないことがあります。海外に転出して住民票がなくなると、印鑑登録もなくなるためです。

その場合、当事務所では、本人に住んでいる国の日本の大使館・領事館(在外公館)で、署名証明書(サイン証明書)と在留証明書の2つを取ってもらっています。署名証明書には住所が載らないので、住所は在留証明書で補います。

この記事では、会社の担当者が役員本人に何を頼めばよいかを、署名が必要な書類、大使館・領事館での取り方、準備の流れの順に整理します。

海外在住の日本人役員は、印鑑証明書の代わりに何を用意する?

住んでいる国の日本の大使館・領事館で、署名証明書と在留証明書を取ってもらいます。この2つで、日本の印鑑証明書の代わりにします。

海外に転出すると日本の印鑑証明書を取れなくなる

日本で役員が新たに就任する登記では、就任承諾書などに押した印鑑について、市区町村の印鑑証明書を付けることがあります(商業登記規則61条4項〜6項)。ところが、海外に転出して住民票を抜くと、それと同時に印鑑登録もなくなります。海外在住の日本人役員が日本の印鑑証明書を出せないのは、このためです。

外務省の案内でも、法務局や銀行などは、海外に住む日本人には印鑑証明の代わりに署名証明を求めていると説明されています(外務省「在外公館における証明」)。署名証明書は、大使館・領事館の領事の前で本人が署名し、その署名が本人のものであることを証明してもらう書面です。

署名証明書と在留証明書をセットで取る理由

署名証明書には、本人の氏名・生年月日・パスポートの番号は載りますが、単独型の署名証明書には住所が載りません。日本の印鑑証明書には住所が載るため、署名証明書だけでは、就任承諾書に書いた住所が本人のものかどうかを確かめられません。

そこで、住所を証明する書面として、大使館・領事館が発行する在留証明書もあわせて取ってもらいます。在留証明書は、海外に住む日本人の現在の住所を、その地域を担当する大使館・領事館が証明するものです。当事務所では、海外在住の日本人役員には、署名証明書と在留証明書をセットで取ってもらっています。

外国籍の役員は取得先が違う

署名証明書と在留証明書は、どちらも日本国籍がある人だけが取れる証明です。外国籍の役員は、日本の大使館・領事館ではなく、本国の機関や公証人で署名証明書を取ります。外国籍の役員の場合は、次の記事をご覧ください。

どの書類に署名が必要か(会社の条件で変わる)

署名証明書と在留証明書が必要になるのは、国内で印鑑証明書を取れる役員であれば印鑑証明書を付ける書類に、海外在住の役員が署名する場合です。どの書類が当てはまるかは、会社に取締役会があるか、新任か重任か、代表者印を届け出るかで変わります。

就任承諾書・選定の議事録・印鑑届書

取締役会を置く会社では、新たに就任する代表取締役の就任承諾書に、印鑑証明書が必要です(商業登記規則61条5項)。取締役会を置かない会社では、新たに就任する取締役それぞれの就任承諾書に必要です(同条4項)。会社を設立するときも、設立時の代表取締役(取締役会がない会社では設立時取締役)について同じ扱いです。同じ人が引き続き就任する重任では、就任承諾書への印鑑証明書は求められません。

代表取締役を選んだ取締役会の議事録には、出席した取締役と監査役の印鑑証明書が必要です(同条6項)。株主総会で代表取締役を選ぶ会社では、株主総会の議事録に署名した議長と出席した取締役が対象です。ただし、前任の代表取締役(引き続き取締役である人に限ります)が、登記所に届け出た印鑑を議事録に押していれば不要です。前任者が押せない場合は、議事録に署名した海外在住の役員についても、署名証明書を用意します。

代表取締役が会社の代表者印を登記所に届け出るときは、印鑑届書に本人の印鑑証明書を付けます(商業登記規則9条5項1号)。海外在住の代表取締役が届け出る場合は、印鑑届書に署名し、署名証明書を付けます。

代表権のない取締役は本人確認証明書を用意する

印鑑証明書を付けない取締役や監査役(取締役会を置く会社の、代表権のない取締役など)が新たに就任するときは、就任承諾書に書いた氏名・住所と同じ内容が載った公的な証明書を付けます(同条7項)。これを本人確認証明書といいます。原本でなくても、本人が「原本と相違ない」と書いて署名した写しを使えます。

海外在住の日本人の場合は、大使館・領事館で取った在留証明書を本人確認証明書として使います。在留証明書には氏名と現在の住所が載るため、就任承諾書の記載と照らし合わせられます。

書類 必要になる人 海外在住の役員が用意するもの
就任承諾書 取締役会あり:新任の代表取締役
取締役会なし:新任の取締役それぞれ
署名証明書+在留証明書
代表取締役を選んだ議事録 取締役会で選定:出席した取締役・監査役
株主総会で選定:議長・出席した取締役
(取締役を兼ねる前任の代表取締役が届出印を押せば不要)
署名証明書
印鑑届書 代表者印を届け出る代表取締役 署名証明書
本人確認証明書 印鑑証明書を付けない新任の取締役・監査役 在留証明書

大使館・領事館で取る2つの証明

海外在住の日本人役員には、住んでいる地域を担当する日本の大使館・領事館で、単独型の署名証明書と在留証明書を取ってもらいます。どちらも、原則として本人が窓口に行って申請します。

署名証明書は単独型を選ぶ

大使館・領事館の署名証明には、2つの形式があります(外務省「在外公館における証明」)。

  • 形式1(綴じ合わせ型):本人が領事の前で書類に署名し、その書類と証明書を綴じ合わせて割り印をする
  • 形式2(単独型):本人の署名だけを単独で証明する

形式1では、署名する書類を日本から送り、本人が大使館・領事館に持って行きます。署名は領事の前でする必要があるため、事前に署名した書類を持って行くと、その場で署名をやり直すことになります。書類が複数あれば、そのすべてを持って行かなければなりません。

当事務所では、形式2の単独型で取ってもらっています。単独型なら、就任承諾書や印鑑届書などの書類には本人が署名だけをし、署名証明書の署名と照らし合わせて確認できます。署名証明書を先に取っておけば、書類への署名はあとからでもかまいません。本人には、署名証明書と同じ形の署名を各書類にしてもらいます。

手数料は1通につき邦貨1,700円相当で、現地通貨の現金で支払います(外務省の案内による。2026年10月確認)。

在留証明書で住所を証明する

在留証明書は、海外に住む日本人の現在の住所を、大使館・領事館が証明する書面です。申請できるのは日本国籍がある人で、原則として日本に住民登録がないことが条件です。また、現地に3か月以上住んでいること(申請時に3か月未満でも、今後3か月以上住む見込みがあること)が求められます。

申請には、パスポートなどの本人確認書類のほか、住所が分かる書類(現地の運転免許証、公共料金の請求書など)と、滞在を始めた時期が分かる書類が必要です。手数料は1通につき邦貨1,200円相当です(同)。

在留証明書は大使館・領事館だけが発行しているため、一時帰国中に日本で取ることはできません。日本で就任の手続きをする予定があっても、来日前に現地で取っておいてもらいます。

本人が窓口で手続きする

署名証明書は、領事の前で署名する必要があるため、本人が大使館・領事館に行って申請します。代理人による申請や郵送での申請はできません。会社の担当者が代わりに取ることもできません。

在留証明書も、原則として本人が申請します。ただし、オンライン在留届(ORRネット)を使ったオンライン申請で一定の条件を満たす場合は、窓口に行かずに済むことがあります。署名証明書を取りに行くときに在留証明書も一緒に申請してもらえば、窓口に行くのは1回で済ませやすくなります。

会社から役員本人に頼むこと(準備の流れ)

海外在住の役員に大使館・領事館へ何度も行ってもらわずに済むよう、会社側で必要な書類を決めてから、本人にまとめて依頼します。

海外在住の日本人役員の就任登記:準備の流れ
1
 
会社の条件を整理する
取締役会の有無、新任か重任か、取締役を兼ねる前任の代表取締役が届出印を押せるか、代表者印を届け出るか
2
 
本人が大使館・領事館で2つの証明を取る
単独型の署名証明書と在留証明書。在留証明書は一時帰国中に日本では取れない
3
 
会社が書類を作り、本人に送る
就任承諾書などの住所は在留証明書の表記に合わせる
4
 
本人が書類に署名し、原本を日本へ送る
署名証明書と同じ形で署名。来日する予定があれば日本で署名してもよい
5
登記を申請する
署名と住所の表記を確認して申請

会社側で先に決めておくこと

本人に依頼する前に、次の点を決めておきます。どれも、本人に署名してもらう書類の種類が変わる点です。

  • 会社に取締役会があるか
  • 新任か重任か、代表取締役か取締役か
  • 前任の代表取締役(引き続き取締役である人)が、届出印を議事録に押せるか
  • 海外在住の代表取締役が、代表者印を登記所に届け出るか

本人に伝えること

本人には、次の3点をまとめて伝えます。

  • 大使館・領事館で、単独型の署名証明書と在留証明書を取ること
  • 会社から送る就任承諾書などの書類に、署名証明書と同じ形で署名すること
  • 署名した書類と2つの証明書の原本を、会社または担当の司法書士へ送ること

就任承諾書に書く住所は、在留証明書に載る住所と同じ表記にそろえます。本人確認証明書は、就任承諾書の氏名・住所と同じ内容が載っていることが前提だからです(商業登記規則61条7項)。在留証明書を先に取ってもらい、その表記に合わせて就任承諾書を作ると食い違いが起きません。

原本が届いたら登記を申請する

書類と証明書の原本が日本に届いたら、署名と証明書の署名が一致しているか、氏名と住所の表記がそろっているかを確認して、登記を申請します。本人が来日する予定があれば、証明書を現地で取っておいてもらい、書類への署名は日本でしてもらう方法もとれます。

当事務所の解決事例

海外在住の日本人役員の就任登記の事例
設立・来日して署名

オセアニアに住む日本人が、新しく設立する会社の代表者に就任したケース

オセアニアに住む日本人の方が、新たに設立する会社の代表者に就任しました。ご本人には、現地の領事館で単独型の署名証明書と在留証明書を事前に取ってもらいました。そのうえで来日していただき、必要な書類への署名は日本でしてもらい、設立登記を申請しました。在留証明書は日本では取れないため、来日前に現地で取っておいてもらったことがポイントです。登記は無事に完了しました。

書類と証明書を郵送

北米に住む日本人が、代表取締役に新しく就任したケース

北米に住む日本人の方が、代表取締役に新しく就任しました。ご本人に単独型の署名証明書と在留証明書を取ってもらい、会社から送った必要書類に署名していただきました。書類と2つの証明書の原本をまとめて日本へ送ってもらい、登記を申請しました。登記は無事に完了しました。

よくある質問

海外に住んでいても代表取締役に就任できますか?
できます。代表取締役の全員が海外に住んでいても、就任や設立の登記を申請できます(平成27年3月16日民商第29号通知)。日本の印鑑証明書を取れない場合は、大使館・領事館で取った署名証明書と在留証明書で代えます。
会社の担当者が代わりに署名証明書を取れますか?
取れません。署名証明書は、本人が大使館・領事館の領事の前で署名して証明を受けるものです。代理人による申請や郵送での申請もできないため、役員本人に窓口へ行ってもらいます。
署名証明書に有効期限はありますか?
ありません。署名証明書について、作成後何か月以内といった有効期限は定められていません。
就任承諾書には、大使館・領事館で署名しないといけませんか?
単独型の署名証明書を取る場合は、その必要はありません。就任承諾書などの書類には本人が署名するだけでよく、署名証明書と同じ形の署名であれば、日本に来たときに署名してもかまいません。綴じ合わせ型の場合は、書類を大使館・領事館に持って行き、領事の前で署名します。

海外在住の役員の就任登記のご相談

海外にお住まいの日本人の役員が就任する登記について、会社の状況に合わせた必要書類の整理、役員ご本人にお願いする署名証明書・在留証明書のご案内、書類の作成から登記の申請まで対応しています。役員ご本人が大使館・領事館へ行く前の段階からご相談いただくと、取り直しの手間を減らせます。

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